「薬や手術で治すことがメインの時代」に、自然治癒力はどこへいく?

こんにちは。滋賀県大津市の「まの鍼灸接骨治療院」院長の藤井です。

6月も半ばを迎え、梅雨入りしたかと思えば、真夏のような厳しい暑さが続いていますね。これからはBBQなど、屋外で楽しいイベントが増える季節ですが、熱中症には十分ご注意ください。


さて。BBQや琵琶湖で泳ぎながら自然のなかでボーっとしていると、いろいろ妄想にふけ時があります。


私たちのように伝統療法に携わる者は、日々「自然治癒力」による健康回復の大切さを実感しています。しかし、現代医療の発展とともに、「治る力=自然治癒力」という考え方が、やや薄れてきているようにも感じます。


もちろん、医学は私たちの安心・安全な暮らしに欠かせない社会インフラです。しかし、文明は進化しつづけるが、「肉体は退化していく時代」において自然治癒力を活かす視点も、今一度見直してみる価値があるのではないでしょうか。


今回は、この「自然治癒力」について、私なりの考えをお伝えしたいと思います。お時間のあるときに、ぜひご一読いただければ幸いです。

【体の中にいるお医者さん】

昔の人は、「人の体には自分で病気やけがを治す力がある」と考えていました。この力を「治る力」や「自然治癒力(しぜんちゆりょく)」といいます。たとえば、風邪をひいても薬を飲まなくても、しばらく休んでいれば元気になることがあります。これは体の中で「治る力」が働いているからにほかなりません。


現代医学(西洋医学)が日本にきたのは明治時代(約150年前)で、それまでは漢方や鍼灸(はり・きゅう)などの東洋医学が中心でした。その後、オランダ、イギリス、ドイツなどから医学がとり入れられてきましたが、医療が発展するとともに体のことを「機械」のように考えるようにもなりました。

余談ですが、カイロプラクティックは発明から130年ほど経っています。日本には1916年に、アメリカで学んだ日本人が初めて持ち込み、私の恩師たちが広めることに力を注ぎました。一方、鍼灸においては発明から約2500年も歴史があり、朝鮮半島からやってきた医師や僧侶によって日本に伝わったとされています。

話しを戻します。

たとえば車がこわれたら修理工場で直してもらうように、「体の悪いところは薬や手術で治そう」という考え方が、西洋医学にはあります。今の病院では、たくさんある病気の中からどれかひとつの病名を決めて、その病気からくる症状をやわらげるために、たくさんある薬の中から合うものをひとつ選んでくれます。また、手術で悪い部分を取りのぞくこともあります。

このような治療はとても効果的なことも多いですが、長い間続く病気(特に慢性疾患)をかかえたときは、症状をやわらげることばかりに目がいきすぎることで、本当は大切なはずの「治る力(自然治癒力)」が軽視されやすくなります。

またお薬の過剰摂取による副作用は軽々しくみることもできません。

人の体はもともと自分で治ろうとする力を持っています。たとえば骨が折れたとき、お医者さんや接骨院の先生は、骨を正しい場所に戻してギプスで固定してくれます。その時、骨がくっついてもと通りになるのは、体の中にある「治る力(自然治癒力)」のおかげなのです。どんなにすごい治療をしても、最後に体を治しているのは「自分の力」なのです。

カイロプラクティックや鍼灸などの伝統療法では薬や注射は使いません。そのかわりに、この体がもともと持っている「治る力(自然治癒力)」を大切にして、体の声に耳を傾けることで健康になれるようにサポートすることを重視しています。

もちろん現代の医学はとても大切なのですが。私たちの体に生まれつき備わっている「治る力」も忘れずに大事にしてあげることが、健康にたいする理解が深まることにつながり、私たちがいつまでも元気にいるためにとても大切な「知恵」になるのです。

【忘れてはいけない自然治癒力】

昔とくらべて、科学がどんどん進歩して、医学もすごく発展してきました。今では、体の中のことがとても細かく分かるようになり、病気の原因もたくさん見つけられるようになりました。それと引き換えにして、人の体を「機械」のように考えることが多くなったぶん、体の一部が壊れたら「そこだけを直せばいい」という考え方になりました。

今の医学では、病気の原因をさがして「体の中の部分」、たとえば内臓や細胞などを手術や薬で治すことがとても大切にされています。その結果、お医者さんは悪いところを見つけて、そこを治すことを一生懸命に考えます。おなかが痛いときは、おなかの中を調べて、悪いところを治します。

でも、そのかわりに「体全体のバランス」や「体が自分で治ろうとする力(自然治癒力)」は、だんだん大事にされなくなりました。自然治癒力とはケガをしたときに、時間がたつと自然に傷が治るような、体がもともと持っている力のことです。この地球上に存在するあらゆる生物は、この自然治癒力なしには生きていけません。

また、昔は今ほど薬や手術の技術がありませんでした。1928年の戦時中に、感染症で命を落とす兵士を救うために抗生物質(ペニシリン)が作られ、手術ができるようになると急病や感染症などがとてもよく治るようになりました。そのような背景から、「お医者さんや薬が治す」という考え方が強くなりはじめたのです。

今の医学では、体のとても小さな部分や細胞の分子までくわしく調べて、どうして病気になるのかを見つけようとしています。そして、何回やっても同じ結果が出ることや、ちゃんと理由が説明できることをとても大切にしています。

これはとても大事なことです。

なぜなら、みんなが安心して治療を受けるためには、はっきりした理由や結果が必要だからです。

でも、その一方で、「体全体のバランス」や「心と体のつながり」など、体が自分で治そうとする力(自然治癒力)や、大きな視点で人間の体や病気をみることは後回しにされがちなのです。たとえば「ストレスや心の不安が体にどんな影響をあたえるか?」ということは健康問題を解消するためにとても大切なはずなのに、現代医学においてはあまり注目されないことがあります。

伝統療法をおこないさまざまな健康問題に対応していると、ストレスや睡眠不足がいかに健康に悪影響を及ぼして、回復力の鍵を握るのかがよく理解できます。したがって情報が溢れすぎてストレスをかかえやすい現代だからこそ、これからの医学は体の部分だけでなく、「全体のバランス」や「心の状態」なども大切にして、みんなが元気にすごせるように考えていくことが大事だと思います。

【体の声に耳をかたむけることの大切さ】

みなさんも、お腹が痛くなったりケガをしたり、熱が出たりしたときに病院に行ったことがあると思います。そんなとき、お医者さんはみなさんの体の悪いところを見つけて治してくれる、とても大切な人たちです。

日本の病院には、「専門医」と呼ばれるお医者さんがたくさんいます。専門医は、心臓やお腹、目など、体の一つの部分をとてもくわしく調べてくれるお医者さんです。だから難しい病気やケガでも安心してまかせることができます。

一方で、「総合診療医」というお医者さんもいます。総合診療医は、体全体を見て「どこが悪いのか一緒に考えてくれるお医者さん」です。いろいろな症状が重なっているときや、どの診療科に行けばいいかわからないときにも、とても頼りになります。ただし、今の日本では総合診療医はまだ少ないので、これからもっと増えてほしいですね。

どちらのお医者さんも、みなさんの健康を守るために毎日懸命に頑張っておられます。お医者さんたちのおかげで、わたしたちは安心して元気に生活することができるのです。しかし、医療が細分かされたことで専門医8割と総合診療医2割という比率になり、いくつかの弊害もおこるようになりました。

➀人を「ひとりの人間」として見なくなる
お医者さんが、患者さんを「病気」や「体の一部」だけで見てしまうことがあります。たとえば、お腹が痛い人が来たら、「お腹」だけを調べて話をよく聞いてくれなかったり、その人がどんな気持ちでいるのか、どんな毎日をすごしているのか、大切なことを見逃してしてしまうことがあります。


たとえば、学校で嫌なことがあってお腹が痛くなったのに、「お腹」だけを治そうとして心のことには気づかない、ということもあるかもしれません。おなかの痛みの原因が、実はストレスや心配ごとだったとしても、体の一部だけを見ていると、それに気づかないまま終わってしまうことがあるのです。

②専門外だと「わかりません」と言われてしまう
お医者さんが自分の専門じゃないと、「わかりません」と言われてしまうことがあります。たとえば、おなか専門のお医者さんに頭のことを聞いても、答えてもらえないことがあります。そうすると、患者さんはいろんな病院を行ったり来たりしないといけなくなり、とても大変です。

また、専門のお医者さんは自分の分野のことだけを深く知っているので、体の他の部分や、全体のバランスについてはあまり考えてくれないこともあります。そのため、患者さんが「たらい回し」にされてしまい、どこに行っても「自分のことをちゃんと見てくれない」と感じることもあります。

③「体のバランス」や「心のつながり」が大事にされない
脳と体は神経ネットワークをかいしていろいろな部分がつながっていて、環境の変化にあわせてバランスをとりながら元気に動いています。また、体には自然治癒力という、自分で治ろうとする力があります。たとえば、ケガをした時にかさぶたができたり、風邪をひいても何日か休むと自然に治ったりすることがあります。これは、体が自分で頑張って治しているからです。

さらに、心(脳)と体はとても深くつながっています。たとえば、心配ごとやストレスがあると、頭が痛くなったり、おなかが痛くなったりすることがあります。逆に、体が元気だと心も明るくなります。これは思考力がホルモンバランスを乱すことで、さまざまな影響をおよぼしている証拠でもあります。


でも、悪いところだけを治そうとするやり方だと、こうした大切なバランスや「見えない力」がどうしても後回しになってしまうのです。

➃薬や手術だけにたよると…
お医者さんが薬や手術だけで治そうとすると、患者さんがもともと持っている「自分で治る力」がうまく働かなくなることもあります。

実際に「痛み」とは体からのSOSのシグナルなのに、痛み止めのお薬を飲むことでその警告を無視ししつづけると、原因が解消されないまま神経のダメージはより深刻になり、健康問題がよりややこしくなることで回復力(自然治癒力)もさらに低下してしまいます。

たとえば薬をたくさんもらっても、体が本当は休みたがっていたり、食べ物や生活習慣を見直した方がよかったりすることもあるのです。さらに、お医者さんや薬に頼りすぎてしまうと、患者さんは「自分のあり方」を改善しようとはしなくなります。

また、いろんなお医者さんに回されて、原因がよくわからないまま薬だけがどんどん増えてしまうこともあります。薬が多すぎると体にダメージがかかったり、別の病気になってしまうこともあります。薬や手術はとても大切な治療ですが、それだけに頼るのではなく、やはり「体が本来持っている力」も大切にしなければなりません。

➄お医者さんと患者さんの関係が「上下」になりやすい
お医者さんは病気のことをよく知っていて、患者さんはわけもわからず困っているので、どうしてもお医者さんと患者さんの関係が、「強いお医者さん」と「弱い患者さん」みたいになってしまうことがあります。そうなると、患者さんが自分の気持ちや希望を言いにくくなり、「自分は大切にされていない」と感じることもあります。

たとえば、「この薬は飲みたくないな・・・」と思っても、お医者さんに言い出せなかったり、「こんなことで病院に来ていいのかな・・・」と不安になったりすることもあります。お医者さんが患者さんの話をよく聞いてくれないと、患者さんは「自分のことをわかってもらえていない」と感じてしまいます。


【まとめ】
今の病院では、お薬や手術で病気を治すことができます。これらはとても強い力を持っていて、急に体調が悪くなったときや、大きな病気のときにとても大切です。

しかし、昔からある鍼灸やカイロプラクティックなどの伝統療法も大事です。たとえば、鍼やお灸、整体、漢方などは、みんながもともと持っている「自分で治そうとする力(自然治癒力)」を助けてくれます。そして、体と心のバランスを整えることで体質改善をおこない、病気を発症するまえに予防することもできます。

病院の治療と伝統療法は、どちらか一つだけがいいわけではありません。お互いに不足しているところを助け合うことで、人間はもっと元気になれるのです。たとえば、伝統療法で体のバランスを整えながら、つらい症状を最小限のお薬でやわらげると、もっと根本から健康に近づくことができます。

これからは「病院の治療も大切、伝統療法も大切」という考え方が、みんなの健康を根本から守る力になります。どちらも上手に使って、心身ともに元気な体をつくっていきましょう。



 

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