夜が眠れないほどの動悸と不整脈

【主訴】

不整脈

動悸

逆流性食道炎

坐骨神経痛

副鼻腔炎

呼吸が浅い

60代 男性

【既往歴】

狭心症(9年前 カテーテル留置)

心室期外収縮

心房細動

20年前に腎結石

21歳のときにサッカーでヘディングをして頭部から転倒

【来院に至った経緯】

9年前に外出先で突然足が上がらなくなり病院へ受診する。その際、狭心症と診断されカテーテル手術をおこない1カ所のみステントを留置した。その後は、心室期外収縮がおこりはじめ心房細動と診断される。次第に動悸がどんどん激しくなり、半年のあいだに救急車で何回も運ばれるようになる。

医師からは再手術をおこなうことを提案されたものの、恐怖心から踏み切れずに現在にいたる。さまざまな整体や病院へは行ってみたものの、この数年で夜中の2~3時になると不整脈による発作がおこりはじめ、眠れない日々がつづいている。

どうにかならないか真剣に悩んでいたときに、たまたま恩師である塩川満章DC(Doctor of Chiropractic)のYouTubeを視聴して「カイロプラクティックであれば、このつらい健康問題を根本から解消できるかもしれない・・・」とわずかな希望を抱く。関西圏に弟子はいないかと探していたところ、当院を発見してはるばる奈良県から来院することを決意する。

【初診の状態】

➀左短下肢

②左耳介上方変位

③左仙腸関節に浮腫

【治療経過と内容】

触診をおこなうと「左腰背部からの筋緊張」がかなり強く、それとともに左仙腸関節の動きが悪くなり、仙骨全体に広がる浮腫みもみられた。骨盤サブラクセーションをもとに左短下肢をしめしており、左胸鎖乳突筋の筋緊張がおこり上部頸椎まわりにも悪影響もみられた。また来院したときには不整脈だけでなく、坐骨神経痛や副鼻腔炎もかなり辛そうにみえた。

上記の所見から、副交感神経系のダメージにより現れている症状であることが考察できたため、副交感神経サブラクセーションにしぼりアジャストメントを開始した。

初回のアジャストメントでは、骨盤サブラクセーションが解消したことで「加重のバランス」が改善されて、仙腸関節まわりの浮腫はかなり減少した。本人も腰まわりがスッキリしたことで「バランスよく立てるようになりました」とたいへん喜んでおられた。

2週目(2回目のアジャストメント)では、長年かかえていた骨盤サブラクセーションが改善したことで、あるべき体のバランスをとり戻して、初回アジャストメント後には筋肉痛のような症状があらわれた。それとともに腰痛と逆流性食道炎がやわらぎ、夜がぐっすりと眠れるようになる。

3週目(3回目のアジャストメント)では、坐骨神経痛によるしびれはまだあるものの「しびれる範囲」が、足先から臀部へと少しずつ移動してきていた。夜中におこる不整脈も、以前と比べると「発作がおこる頻度」が少なくなったとのこと。

8周目(5回目のアジャストメント)では、風邪をひいた悪影響から久しぶりに不整脈がおきた。しかし、それまでは発作はおきておらず、以前と比べて「発作がおきている時間」はかなり短くなる。また坐骨神経痛によるしびれは消失して、腰まわりに痛みを感じるようになる。(感覚が変化した)

13周目(7回目のアジャストメント)では、腰痛が消失した。夜中におこる不整脈も消失した。胃に違和感を感じたときにだけ不整脈がおこる。

26週目(15回目のアジャストメント)では、初回に悩んでいたつらい症状はすべて解消した。継続的なメンテナンスのご希望もあったため、現在では1ヶ月に1回のメンテナンスへと移行している。

【考 察

自律神経には「➀交感神経」と「②副交感神経」など2種類の神経があるが、車で例えるならば交感神経はアクセルであり副交感神経はブレーキにあたる。通常、私たちの体はこの自律神経が「環境の変化」にあわせてあるべきはたらきをおこなうことで、どんなときでも健康をベストな状態に維持している。

今回のケースでは「腰痛・副鼻腔炎・逆流性食道炎・不整脈・動悸」すべて、副交感神経サブラクセーションにもとずいて交感神経が興奮しつづけたことでおきていた症状であることが考えられる。

もともと体のバランスがゆがみ骨盤サブラクセーションをおこしはじめると、いずれ首でバランスを補うようになり頸椎サブラクセーションがおこりはじめることは少なくはない。またカイロプラクティックの400万件以上にもおよぶ臨床データーにもとづいた考えからも、やはり首や骨盤はともに副交感神経の領域とされている。

副交感神経サブラクセーションがおこりはじめると交感神経が過剰にはたらくようになり、腰痛や肩こりなどの症状をかわきりにさまざまな健康問題がおこりはじめる。

特に副甲状腺のはたらきが亢進しつづけると、骨からのカルシウム吸収がうながされることで、骨密度が低下するかわりに血中カルシウム濃度が上昇しつづけてしまい腎臓結石がおこる。また体内の分泌物などが過剰になることで副鼻腔炎がおこり、胃酸分泌が過剰になることで逆流性食道炎がおきていた。

上部頸椎サブラクセーションは分娩時のダメージにより頻発するとされているが、今回のケースにおいては21歳のときにサッカーをしていてヘディングをしたときに、頭部に強すぎる外力が加わったことでおきた上部頸椎サブラクセーションだと考えられる。

上部頸椎は脳幹(生命維持装置:中脳・橋・延髄)を支えている重要ポイントであり、サブラクセーションがおこることで迷走神経に影響をおよぼしはじめる。すると胃腸や心臓のはたらきを含めた広範囲に悪影響がおよぶとされている。

特に今回の心臓のトラブルにおいては、上部頸椎サブラクセーションにもとづき交感神経が過剰に興奮しつづけたことでおきていた。

【上部頸椎サブラクセーションについて】

カイロプラクティックは1895年9月18日 D.Dパーマーにより発見され、息子であるB.Jパーマーにより研究がすすみ上部頸椎スペシフィック(HIO)が開発された。

1935年にB.Jパーマーが15億円を投資して設立した、リサーチクリニックではさまざまな専門医が集められ、全米から重症患者のみが集められカイロプラクティックのさまざまな臨床研究がおこなわれた。その結果、「神経が再生するためには90日(3ヵ月)かかる」ということを解明したが、今回のケースでは見事にその真意がみてとれた素晴らしいケースだった。

カイロプラクティックを発展させるために、生涯をかけて注力しつづけた先人たちの「偉大なる功績」にあらためて敬意を示しつつ、私たち人間がもつ「自然治癒力の底力」をあらためて感じることができた。

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