【主訴】
下肢のしびれ
腰痛
80代 女性
【既往歴】
耳鳴
筋力低下
貧血
骨粗鬆症
卵巣のう腫(7年前)
【来院至った経緯】
5カ月前のある日。特に何かしたわけではないのに、ひどい腰痛があらわれた。痛みがひどい状態がつづいたため近所のリラクゼーションサロンで施術を受けてみたものの、痛みはさらに強くなりシビレもでてきた。
その後、総合病院で診察をうけたところ「圧迫骨折による腰痛」と診断されてしまう。現代医学的な治療基準のメソッドにもとづき、痛み止めやコルセットによる緩和ケアをうけたものの、つらい症状は改善しなかった。
さらに、病院の医師からは「病院では、これ以上できることはありません」と言われ、マッサージ店でも「この状態ではとても触ることができません」と断られてしまう。
その後、症状が悪化しつづけることで寝返り動作だけでなく階段の上り下りすらも難しくなり、「このままでは歩けなくなる・・・」と不安をかかえながらやり過ごしていたところ、実娘が通院している整体院の先生から当院を紹介されて来院する。
【初回の状態】
➀左PSIS下部に浮腫
②右耳介上方
③左胸鎖乳突筋の緊張
【治療経過と内容】
触診をおこなうと「腰背部の筋緊張」はかなり強く、脊柱起立筋の「膨隆の変化」も圧迫骨折がある胸腰椎移行部(T12~L1)にあわられていた。また骨盤サブラクセーションにより右短下肢をしめしており、慢性的に腰椎にダメージがかかりつづけていたことがみてとれた。
また既往歴としてもともと骨粗鬆症もあることから、副交感神経サブラクセーションにしぼりアプローチを開始することにした。
初回(1回目のアジャストメント)では、長年のサブラクセーションをかかえつづけた悪影響により、脊椎治療専用テーブル(トンプソンテーブル)にうつ向けになることすらままならない状態だった。しかし、愛護的に骨盤のアジャストメントをおこなうことで、体のバランスが整うとスムーズに治療体勢をとることができるようになった。
1週間(2回目のアジャストメント)では、骨盤サブラクセーションが解消したことにより、つらい痛みによりできなかった「椅子から立ち上がる動作」がスムーズにできるようになり、本人もたいへん喜んでおられた。
2週間目(3回目のアジャスト)では、つらい痛みが10から3へと大きく改善されて、良くなる兆しを実感されつことで安心されていた。
3週間目(4回目のアジャスト)では、しびれが消失したことから嬉しさのあまり、草引き作業をしてしまい軽度の腰痛がでてしまう。指導不足を反省して、全快するまでは無理をしないように注意をうながした。
4週目(5回目のアジャストメント)では、畑作業をおこなうと軽い腰痛はおこるものの眠ると治るようになる。慢性的な痛みやしびれは消失して、日常生活ではとくに何も不自由を感じることはなくなった。
今では、大好きな畑仕事もできるようになり、「調子がいいからと、無理しないようにね~」と声をかけながら、月に1回のメンテナンスを継続することで元気に過ごされている。
【考察】
骨粗しょう症をもともと患っていたことから、「副交感神経サブラクセーション(神経の働きがうまくいかない状態)」が長年続いていたと考えられる。正統なカイロプラクティックでは、神経の働きを正常に戻すために、以下の5つの検査を総合的におこない体の状態を把握する。
➀視診(見て調べる):姿勢や体のバランス、筋肉の左右差などを目で観察します。
②触診(手で触れて調べる・動かして調べる):静的・動的に骨や筋肉、関節の状態などを手で確認します。
③ 体表温度の測定(皮膚の温度差をみる):神経の働きや炎症の有無などを皮膚の温度差から判断します。
➃レントゲン評価(椎間板スペース・骨格の形状):骨格や椎間板の状態を客観的に評価します(病名を決めるなどの診断はしない)
➄ その他(必要に応じて神経学的検査や筋力検査や理学検査など):神経伝達や筋力の異常を調べて、医学的なリスク管理をおこないます。
どんな健康問題を抱えていても、カイロプラクティックでは症状の根本原因となる背骨の部分を「1ヶ所から3ヶ所」に絞り込み、その部分に対して「アジャストメント(調整)」をおこない、問題の解消を目指していきます。
このアジャストメントは、「神経の流れを正常に戻すための施術」であり、伝統的なカイロプラクティックの代表的なアプローチ方法となる。
したがって、むやみに背骨をねじって「ボキボキ」と音を鳴らすだけの整体は、たいへん危険であることを主知徹底したい。そうした乱雑な施術は人工的なサブラクセーション(背骨の異常なズレ)を作り出すだけでなく、「背骨の老化」を早めることで問題をより悪化させてしまう。
臨床をしていると「どこへ行っても良くならない・・・」と路頭に迷っている患者さんほど、この人工的なサブラクセーションが散見されているからだ。
背骨(首の骨7個、胸の骨12個、腰の骨5個=合計24個)と骨盤のうちから、個々の状態に合わせて治療ポイントを選びだして、一人ひとりに最適なオーダーメイドの施術をおこなうのです。
また、正統なカイロプラクティックの学問では、長年の研究により「脳と体の神経ネットワーク」が重要視されており、背骨や骨盤のバランスを整えることで神経のはたらきを正常化するべくアプローチをおこなう。
➀ 首の骨1~5番と骨盤は、「副交感神経(リラックスをつかさどる神経)」が多く集まる場所。
②首の骨6番から腰の骨5番までは、「交感神経(体を活動的にする神経)」が多く集まる場所。
このように「背骨の部位によって自律神経の働きが異なる」という考えをもとに、症状をみながら「どの神経系がダメージを受けているか」について考察をたてる。
そこから「①筋骨格系の問題・②自律神経の問題・③内臓の問題・➃ホルモンバランスの問題」にわけて、その人に合ったアプローチを1ヶ所から3ヶ所にしぼり調整をおこなう。そうすることではじめて治癒力を分散させることなく、最大の効果が発揮されるようになる。
今回のケースでは、副交感神経の問題がつづいて交感神経が強く働いたことで、副甲状腺の働きが過剰になり、ホルモンバランスとカルシウム代謝が乱れて骨粗鬆症になったと考えられる。さらに、骨盤のゆがみにより背骨にダメージがかかりつづけて、生活習慣の影響も重なったところで圧迫骨折が起きたと考えられる。
体のバランスを根本から整えることで、圧迫骨折による慢性的な背骨のダメージが軽減され、つらい症状の改善につながった。
これからも超高齢化社会の影響から同じようなケースは、どんどん増えると考えられます。そのため、健康に悩む方たちから助けを求められたときに、しっかり力になれるようこれからも日々学び続け、さらに技術や知識を磨いていきたいと感じました。
【伝統療法と自然治癒について】
体のバランスが崩れている期間が長いほど、神経へのダメージも続きます。そのため、一度で症状がすぐに良くなることは難しい場合があります。しかし、体のバランスを整えて維持することで、神経は少しずつ回復し、慢性的な痛みやしびれも根本から改善していきます。
今回のケースのようにたとえ骨に「構造的な問題」があっても、全身のバランスを整えることで症状の改善は期待できます。ご安心ください。
なお、神経は1日に約1mmずつ再生していき、完全な回復には約3ヶ月かかるとされています。
“The power made the body, heal the body”
「あなたの体を作った力が病気を治す」
健康問題をかかえたときには体のバランスを整えて、自然治癒力を引き出すことが病を根本から解消するカギとなるのです。
